第1章

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「ねえ、チイ。自由研究決まった?」 私の事をチイと呼ぶ、友達のユミが真っ先に聞いてきた。丸田弓華。水泳で焼けた肌と、塩素で少し脱色された茶色い髪が、その抜群のスタイルと短くしたスカートによく似合っている。 眩しい。くそ。頑張れ、私の胸。 私は無意識に自分の胸に手を置き、発育の遅い胸部に激励を送った。 「え、まぁ」 「何々!?教えて!?」 いざ言うとなるとなんだか恥ずかしい。『ヌカ』って。 でもこのタイミングで言わなかった事を私は後悔した。 「マジかよ!?何だよ、『ヌカ漬け』って!?お前、そんなもの研究に選んだのか」 「悪ぃか。誰もやらねえから研究になるんだろうが」 私はその『話題』と『声』に、思わず振り返った。 セタ君。勢多総一郎。男子バスケ部の副キャプテン。178センチ。スモールフォワード。一年からエースで、周りの女子もきゃあきゃあ言ってたんだけど、2年の初めの『おもらし事件』でその女子たちも一気に引いていった。でも私は知ってる。セタ君が、友達を守る為に、全身ずぶ濡れになって、それに尾ひれがついて『おもらし』になった事を。 セタ君は悪くないのに。 おもらし事件の前も後も変わらず黙々と練習に明け暮れる彼に、胸が締め付けられるような。ただ引いていった女子に不信感を持ったのか女子とはほとんど話さなくなった。 なんか可哀想。 そんな理由もあって私は彼を意識するようになった。 目があっただけで顔に血が上り、赤くなるのが分かる。それまではバスケ部のエースぐらいだったのに。そこから私はバスケのルールを必死に覚えて、セタ君の試合をたまに隠れて見に行った。好きなのかと聞かれれば、正直分からない。でも・・・。 今年から同じクラスになって歯痒さが増した。
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