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………… 綺麗に焼かれた北京ダックからシンプルな卵のスープに至るまで、そのどれもが美味で、普段以上に箸が進んだ。 狩野氏は、以前と比べると、随分青司さんや嵐君のことを気にしているように見える。 ……元々、そういうひとだったのかもしれない。 何かが奇妙にねじれてしまって、上手く表に出せなくなっていただけで。 本当はずっと、彼は父親としての感情を胸に秘めていたのかもしれない。 「狩野さん」 「……ん?」 「以前、僕に。男同士の恋愛を公言できるかと、お聞きになったときのことを、覚えていらっしゃいますか」 あのひとと付き合い始める前のこと。彼は僕に言った。 ――男同士の恋愛を、君は公言できるか? ――結婚もできない、こどもも望めない。そんな関係に、先があると思うか? 覚えている、と狩野氏は答えた。
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