八月の微熱

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ね、センセぇ… ちゃんと見て? ペタ、り…… ペ、タリ… 足裏の緩いフローリングの硬い感触に濡れた足指が滑る。 センセぇの部屋は足の踏み場もないくらい乱雑に物が溢れている。 それが、センセぇらしくて ずっとずっと歳上のヒトだけど可愛くて愛おしい。 「ね、センセぇ。アタシ、何だか寒くなってきちゃった…」 部屋に上がったアタシを迎えるセンセぇの持つ二つのカップからは湯気が出ていてコーヒーのいい香りがする。 センセぇの匂いがするバスタオルを抱きしめる腕も指も、センセぇを呼ぶ声も唇すらもカチカチと小刻みに震える。 「リズ、とりあえず先に着替えろ」 あ、ほら。……また。 「リズじゃないもん。 名前ぐらい、ちゃんと言ってよ…」 センセぇの、バカ…… 目の奥が怠くなるのを耐えながら唇を尖らせた。
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