八月の微熱

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鴨芽銀座商店街の裏通りにある内科専門の菊池医院を息子が継いで早15年。 当時、都会の大学病院を辞めて鴨芽に来た先生はここら辺の大人とは違う雰囲気を醸し出していて、母ちゃん達すらざわついたんだ。 今なら解る、敵は相当モテてていたはず。 丈夫が取り柄な俺の菊池医院への利用は年に1回あるかないか。 だから、ライバルが医者としてヤブなのか…真意はわからない。 先生が下町の田舎者を相手にするはずもなく、未だ独身を貫いているのには女がドン引きする何かあるからだと噂されている。 未だ夢から醒めないのはリズだけだ。 今やアラフォーの先生は昔からの仲間みたいにウチの兄貴や秀くんらとつるむことが多い。 リズの家は鴨芽銀座商店街を入って中ほどにある堀池屋は化粧品専門店で今の店主のリズの母ちゃんは女優ばりの美貌を持つ。 リズを一言で表現するならば「ギャップ萌え」。母ちゃん譲りの外見のくせに残念なほどに内気な性格をしている。 ガキの頃からいつもワガママ志那の後ろを歩いていて、真夏の公園に居ても康代と腕を組んでいた。 外遊びしている俺らが一番最初にからかうのがリズで、それに対して言い返したりやり返したりしない。
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