君と声

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俺の友達、戸塚圭介はいつも無口だ。 というか声を聞いたことあるやつなんているのか?と言うほど無口だ。 どれくらい無口かというと小学生の頃から大学生である今まで授業で指されようが俺が何を質問しようが首を縦か横に振るくらいで全く喋ろうとしない。 最初の頃は声を出さないんじゃなくて出せないんじゃないかと疑った程だ。 学校の先生に当てられたって高校大学の集団面接だって一言も声をあげないのだから正直お手上げだ。 家ではどうしてるのか謎である。 その状態でどうしてあいつが俺と同じ高校と大学に入学、卒業出来たのか解らない。 寧ろよく合格出来たなぁとしみじみ思ってしまうほどだ。 ちなみに俺と友達で居られるのは凄く稀にだが筆談をするからだ。 どうやら筆談はOKらしい。 一度手話で話しかけられたが俺は手話はさっぱりだからすぐにやめてもらった。 そんなあいつはテストだけはいつだって学年トップ。 喋ろうとしないお陰で授業態度でマイナスくらって通知表自体はあまりよろしくないといううわさだが… 同じクラスになった事もあるがどうしてなのか頑なに喋ろうとしない。 薄い茶色のふわふわとした髪の毛に陶磁器のような肌をした戸塚。 青とか赤の中世ヨーロッパ風の洋服にかぼちゃのパンツなんて普通着こなせなさそうな服でも着せてみたら本当にどこかの国の王子様のように着こなしそうな感じの戸塚。 白馬でも居たらきっと完璧だろう。 (無論馬鹿にしているわけではない。褒めているのだ。) 何故か毎日俺なんかと一緒に居ようとする戸塚。 笑うときもいつも声を殺して肩を震わせるだけの戸塚。 戸塚は一体どんな声をしてるんだろう。 その滑らかな肌や優しい風貌、ともすれば儚げに見えるのに実は結構引き締まってた身体を持っている戸塚。 そんな戸塚に見合う声はどんな声なんだろうか。 俺と違ってちゃんと声があるのに声を出そうとしないこいつが憎たらしくもありもどかしくもある。 戸塚の声を聞いてみたい。 ただ微笑むだけじゃなくて戸塚に笑って話したりしてもらいたい。 俺の気持ちが友達としての純粋な気持ちから別の気持ちに変わるのにそんな時間は掛からなかった。 けど俺じゃ駄目なんだよなぁ… 近くに居られるだけで満足してなきゃな。
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