君と声

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----そして冬。 クリスマスに戸塚を誘うとふわりと笑ってOKしてくれた。 喋れない私は手紙をしたためた。 長年の想いが沢山詰まった感謝の手紙だ。 これで戸塚は私から解放される。 最後一緒に見るもみの木の前でお別れする前に渡そう。 当日私は気合を入れた。 今、私は戸塚とお別れする最後のもみの木の前。 今日は目いっぱい楽しんだ。 お別れの事など考えもしなかった。 辛いけどもう思い残すことはないと思った。 朝起きたときからずっと今日は行ったとしても手紙なんて渡さず帰ろうかと何度も悩んだ。 けれどそれじゃ駄目なんだ。 だから今日渡さなくては。 私はまっすぐ戸塚の目を見た。 戸塚はじっと戸塚を見つめる私を見て固まっている。 戸塚が私の左手をゆっくりと握る。 目をすうっと閉じて薄く開くと何か言いたげにもしてみせた。 その顔を見つめているだけで周りのざわめきも耳に入らなくなってきた私は頭をフル回転させる。 今だ。 戸塚の仕草に急に恥ずかしくなって慌てた私は空いてる手でカバンをまさぐる。 今しかない! カバンから手紙を………
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