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「カスタムデザインは、どの様になさいますか?」
映像の向こう、作られた美人が、作られた声で、作られた通りに会話する。
『素体のままで良い』
「はい? そう仰いますと」
小首を傾げ、愛らしく。
ほんの少しばかり上目遣いに疑問形の声色。
素早く、キーを打ち込む。音声通信は不調で、こちらからは使えない。
『そのままだ』
「そのまま、何も付けないと仰いますか? 素体のままでは、見た目が……」
美しい彼女は美しい声で、尚もカスタムデザインを勧め様とするが、私はきっぱりと断る。
『人間らしさ等不要だ。私は有能な助手が欲しいだけなのだからな』
暫くの沈黙。偏屈な言葉の処理に手間取るか。
その間に一つだけ、私の中に悪戯心に近い要求が浮かぶ。
「はい。承りました」
殆ど無表情に近い顔で、作られた物らしく、最も単純化された返答が唱えられる。
『そうだな。一つ注文を付けるなら、こちらの問い掛けに肯定ならば右目が緑に、否定ならば左目が赤く光る様にして頂きたい』
見た目が更に人からかけ離れると言うのに、美女はもう私の偏屈さを理解したか、にこやかに応じた。
「かしこまりました」
二日後、注文した通りの助手ロボットが届く。
カタログを見ないで注文したのだが、女性型だったか。
最も、髪も睫毛も無いつるっぱげの頭部に、形状記憶合金に包まれた鈍く輝く銀色のボディ。
カスタムデザインはただ一つ。肯定なら緑に、否定なら赤く光る目。
音声すら付けていない。
無機質なロボットに、感情など不要だろう。
イエスか、ノーだけが分かれば良い。
人間らしく感情豊かに応じられても、私にとっては煩わしいだけだ。
ましてや、私は忙しい。
この地上に降り注ぐ塵芥をかき集め、分析し、これから先の地球環境の予測をしなければならないのだ。
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