第1章

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 いや、確かにキミトの裸エプロンはかわいい。尻が丸出しで、そけい部の辺りが見え隠れするのもいい。さっきから部屋中に漂う料理の匂いも、空腹の俺の胃を刺激している。折角飯が出来ているんだし、飯を食べてからでも遅くないだろう。 「まぁ、なんだ。話は飯を食ってからだ」  キミトに服を着ろと命じて、俺はソファを立ち、ダイニングテーブルに並んだ飯を眺め、席に着いた。空きっ腹を隙間なく満たして、俺は食後の茶を飲んだ。一息吐いて、キミトに言った。 「それじゃあ、さっきの続きだ。俺はお前とつきあうと取り決めを交わしたとき、お互い深入りしないって決めたよな?」  キミトがニコニコしながら、頷いた。こういうときのキミトは頭が悪そうに見える。本当に分かっているのか、判断が付かない。 「決めたよな!?」  強めに聞き返すと、キミトが再度深く頷いた。 「で、別れるのも後腐れなく、ってことも覚えてるよな!?」 「覚えてるよ」  いいや、絶対覚えてない。と、俺は確信していた。でなければ、ここに来ない。 「仕事で忙しいことは先に言ってたよな!?」 「うん、聞いてた。でも三ヶ月とは思ってなかった」 「期間とか関係ないんだよ。会えないときは会えないんだ。我慢できなかったら、別れるだけだろ」 「そうなの……?」  キミトがしょぼくれた顔をする。それが何ともかわいい。……いや、同情は禁物だ。面倒を引きずると、後々やっかいなことになる。 「じゃあ、最後にお風呂に入ってよ。俺も心の準備するから」  やっと、言うとおりにしてくれる気になったらしい。俺はネクタイを外し、脱いだ服をソファにおいて、風呂に向かった。と、よろりと足がつまずいた。なぜか足がもつれてまっすぐに歩けない。そのまま廊下に突っ伏して転んだ。一体、どういうことなんだ!? 「あ、怪我してない? 言われたとおりの量だけど、ちょうど良かったのかな? 多くないと良いけど……。 お風呂に連れて行ってあげる。こう見えても力はあるんだよ」  頭上からキミトの声がした。俺は次第にまぶたがくっつきそうになるのに抵抗できなかった。  気がつくと風呂場だった。両手をネクタイで縛られ、シャワーホルダーにくくり作られている。自由を奪われた状態で、湯船に浸かっている。  両足は革の拘束具の付いた棒で固定され、動かすことも閉じることも出来ない。 「こ、これは……」  酒に酔ったような気分だった。
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