一ノ瀬つばさ:運命の出会い・パート2

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「8千万人、です」 「そう、正解。じゃあ亜人になる確率は何人に1人?」 「えっと、」これは知ってる。「10万人に1人です」 「半分正解」大神さんは優しかった。 「10年前の統計ではそうでしたけどね、5年前の統計では8万人に1人になりました」 「そう、だったんですか? 初めて聞きました」 「……この国の亜人教育なんてそんなものです」  ずきっ、と胸に刺さるような言い方。けれどすぐにそんな言い方は止めて、明るい声で私に続けた。 「それで、今だした数字からこの国に何人の亜人がいるかが分かりますよね」 「あ、はい。……えっと、」8千万÷8万だから…… 「……」 「千人」大神さんはちょっと呆れているような声だった。「もしかして、算数は苦手?」 「か、紙と鉛筆があれば!」  そういうと大神さんはぷっ、とふきだして、それから声を出して笑った。顔がかあーっと暑くなっていく。高校生にもなって算数が苦手だなんて。せめて「数学」が苦手っていうのが年相応なのに! 「一ノ瀬さん、君は面白い人ですね」  それはもうただの慰めの言葉にしか聞こえません、そう言えれば幾らか楽になったかもしれないけど、言えなかった。 「君の班にも算数が苦手な子がいるから、一緒に勉強したらいいでしょう。勉強がよく出来る子もいます、どうしても分からなかったら教えてもらって下さい」 「班? 班ってなんですか?」 「亜人学園では4人1組で班を作って活動することがあります」  ――仲良くなれるかな。ずっと一緒だと気まずいな。 「全部の教科をその班で受けるんですか?」 「いや。学外活動やレクリエーションが主ですね。班は広い年齢層で構成されるので、授業はできません。科目授業は年齢別で分けられています。けれど仲良くなる機会が多いからみんな班でつるんでいます。一ノ瀬さんもすぐに輪に入れますよ、きっと」  大神さんは気楽に言ってくれた。私を安心させようとしてくれてるんだろうけど、そう言う気遣いがかえって私の不安を煽る。
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