第1章

2/2
前へ
/2ページ
次へ
「何してんの?」 「んー……、ゲーム……」  暎紀(えいき)がベッドに寝っ転がって、携帯をいじっている俺の隣に座って、手元を覗き込んでいった。俺は携帯画面を見つめたまま、上の空で返事をした。 「せっかく泊まりに来たのに、ゲームばっかしてないで、話とかしようよ」 「えー……、なんの?」 「今日見に行った映画の話とかさ、いろいろあるじゃん」  暎紀がそんなことをぼやきながらベッドに上がり込んできたので、俺は端に寄って、それでもゲームを続けていた。すると、暎紀まで寝っ転がって、俺の顔の横に頬を近づけて、携帯の画面を見ようとする。 「邪魔だよ」  俺は素っ気なく背を向けようとした。 「なんで? 見てたらいやなの?」 「んー……、なんとなく……」  暎紀のつけたコロンの香りがすぐそばから香ってきて、落ち着かなくなる。ゲームに集中できない。 「なんのゲームしてんの?」 「オセロ……」 「オセロなら、俺とできるじゃん。携帯でやんなくても、持ってるだろー?」 「別に、携帯で遊んでもいいじゃないか」  俺は面倒くさくなって、ちょっとつっけんどんに答えた。 「俺と遊ぼうよ」  暎紀が文句を言いながら、俺のシャツのボタンを外し始めた。 「ちょっ……!?」  俺は驚いて、携帯から視線を外して、暎紀をみた。  いたずらっぽく暎紀が笑い、舌を出す。 「遊ぶなら、いいだろ?」 「今日は寝るだけだって約束したじゃないか……」 「だから、寝る前に、ちょっとだけ」 「じゃあ、ゲームしたくなくなるような気分にしてくれよ……」  俺は携帯に視線を戻して、小さくいった。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加