第1章

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 初恋が甘酸っぱいって言ったのは誰だ。  そんなものあるわけがない。  キャッキャウフフと腕組んだり、引っ付いたりして楽しんでる馬鹿な男女はまだしも。  俺は決してそんな風になったことがない。  だから、お前と汗まみれになって、技を競い合って、勝ち負けに有頂天になって、肩を組み合って、仲間意識を強めている。  清信……、お前の肩、広くてそれでいてなめらかな筋肉がまるで豹のようにしなやかだ。  ずっと触れてたいよ……。  おまえの匂いも好き。汗の臭いも、シャワー浴びた後のせっけんの香りも。きっと、あそこの匂いも俺は好き。  ボールを両手で受け止め、ハイジャンプしながらパスした時にあらわになる脇も好き。微々とした脇毛に舌を伸ばして、俺の唾液でぐちゃぐちゃにしたい。  汗をかいてうっすらとランニングシャツに透ける、小さな突起がとてつもなく俺を誘っていて、前歯で軽く齧ってしまいたい。  辛くて、苦くて、切なくて、恥ずかしい。  お前がそばに近寄るだけで、俺は理性が吹き飛びそうになる。  気持ちを誤魔化したくて同じ部活を始めたのに、自分でドツボにはまった感じだ。  シュートが決まったときの笑顔を独り占めしたい。  こんなに近くて、すごく遠い。  お前が欲しくて醜くなる自分がすごく恥ずかしくて、絶対お前に知られたくない。  ほんと、誰だよ。初恋が甘酸っぱいなんてほざいたのは……。
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