第1章

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「先輩も傘を忘れるタイプだったんですか?」 「まぁな。ずぶ濡れになってたな。おまえは、昔からこんな風に折りたたみを用意しといたのか?」 「そうですね……。そしたら、好きな人と偶然一緒に帰れたりするかもしれないじゃないですか」 「ああ、そういうこと」 「だから、好きな人がよく通る道で待ち伏せして、声を掛けるんです。折りたたみ傘ありますけど、一緒に帰りませんかって」 「あははは。おれにみたいにか」 「そうですよ。おれ、先輩のこと好きですからね」  それから何となく黙ってしまって、駅まで傘に入れてもらった。構内に一緒に入るのかと思ったら、富樫は反対方向のバス乗り場に行くと言って、また元来た道を戻ってしまった。  何となく、あれから、俺の頭から富樫の言葉が頭を離れない。  偶然か、必然か……。富樫がなにも言わない以上、おれには何とも言えない。
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