第1章

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 止めどなく流れる、心の血潮が、感情を埋め尽くしていく。彼の香りが体から離れない。彼の形を、体が忘れてくれない。彼の息づかいを今も耳に感じる。きっと、叫んでも届かない。無言の別れが語っている。切り捨てられた僕という存在。  夜中に、ふと目が覚める。自分の右側を埋めていた形、隣に手を伸ばし確かめる。いまは冷たい空間。温めてくれた体はもうない。彼の香りを自分の身に染み込ませて、ただひたすらに、思い出に縋る。
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