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それから数日。
心も体も、すでに限界だった。
時折意識を飛ばすと、そこにはいつもいつも由美ちゃんの笑顔が浮かぶ。それが無性においらを悲しくさせた。
寝ても覚めてもやっぱり想うのは君のことばっかり。
おいらはいつもこんなにも思ってる。由美ちゃんは・・・?
もうおいらのことなんて忘れっちゃたのかな・・・。
そんなこと、もうどうでもいいか。だって、おいらはもう由美ちゃんには必要のないただの「狗」なんだから・・・。
『人間達は都合の良い時だけ俺達を構って、それ以外は見向きもしねえ。・・・俺達はそんなもんだ』
意識が途切れる直前、いつかに聞いた長男の一言がおいらの頭に反芻した。
そのとおりだったのかもしれない。それでも心のどこかでもう一度由美ちゃんがおいらを迎えに来てくれると、未だ期待するおいらはやっぱり馬鹿なんだろうか・・・。
答えの出ぬまま、おいらはそっと目を閉じた。
その先は深い闇。それでも心地よい、そんな場所へ――。
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