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4
二度とこちら側へと戻ってくる事は無いと思った。
いや、もうこちら側に戻ってくる必要はないと思っていた。
それでもおいらを呼ぶ温かな声が聞こえたような気がして、おいらはそっと目を開けた。
おいらが眠っていた場所はいつもの四角い箱の中では無く、上を見上げるとそこは白い何処かの天井があった。
一瞬由美ちゃんの元に帰れたのかと思い、慌てて辺りを見回せば目の前には黒い塊。
「うきゃっ」
思わず悲鳴をあげ、後ずされば目の前には見知らぬ犬が眠っていた。
おいらの声に目を覚ましたのか、おいらよりずっと大きなその犬はしばらくぼんやりとおいらを見つめていた。
おいらの母親も、兄弟達もこれほど大きくは無かった。きっと犬種とやらが違うのだろう、と納得しながらも、おいらは警戒する態勢をとる。
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