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体は空腹で力は出ない。
それでも今持ちうるすべての力で目の前の人間を拒絶する。必死にうなり声をあげる。
そうすればいつかの里子に出される時みたいに、人間達はおいらを放っておいてくれるはずだ。そう思ったのに・・・。
「こらこら、ちびすけ。そんなに警戒するなよ」
何故かからからと笑われて、そっと頭を撫でられた。
噛みついてやろうとそう思ったのに、その手があまりに優しくて温かくて・・・。
噛みつかないでおいてやったのは、お前の手が昔の由美ちゃんに少し似てただけで・・・。本当にそれだけなんだからな。
勘違いすんなよ!気を許したわけじゃないんだからな。
そんな思いを乗せて目の前で笑う人間を睨みつけてやったのに、目の前の人間は何故かさらに笑いを深めておいらの頭をぼさぼさにした。
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