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『夢とは何?』
当時六歳だった僕は、色んな人にこんな事を
尋ねて回った。
すると、多くの人は決まってこう言う。
『夢は、叶うもの。叶えるもの。
子どもの希望である。』
その答えを何度聞いても、心は満たされる
どころか、開いた穴が広がっていくばかり。
求めている答えは誰もくれない。
――しかし、ある人はこう答えた。
『夢とは、絶望に変わるもの。
夢を抱けば、必ず不幸が訪れます。』
ある『出来事』で両親を亡くした直後だった
僕の心には、その答えがすっと染みてきた。
(そうだ。僕は夢を見ていたんだ。)
優しい両親といつまでも穏やかに暮らしたい
なんて夢を抱いたから……両親は殺された。
不幸が訪れたんだ。
『じゃあ、幸せとは何?』
その人は、僕の問いに答える事は出来なかった。
その人も、質問をした僕自身も
幸せというものを知らないから。
両親と過ごした何気ない毎日が幸せだったのか?
それとも、難を逃れて今、こうして
生きている事が幸せなのか?
いくら考えても、その答えには辿り着かない。
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