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六歳の時に起きたあの日の『出来事』で 両親を亡くした僕は、たちまち屋敷内で 孤立した。 生まれながらに背負った宿命とはいえ、 亡くなった当主の後を継ぎ、家督を相続する事を 定められた六歳。 もちろん、誰もがまだ幼すぎると反対した。 それでも他の跡継ぎがいないために 僕が ある一定の年齢に達するまで『当主代行』 という形で当主の椅子に座る事で合意した。 しかし、ほとんどの人間から望まれない 未来の当主の誕生に、当家はかつてない程 大きく揺らいだ。 使用人たちの相次ぐ辞職届け。 新米のメイドや前当主の代から当家に勤めていた 古株の執事まで…… 当主代行(ぼく)に不満を持った者たちが 次々と屋敷を去っていった。 紆余曲折の末、僕が十六歳になるまで 残っていた使用人はたったの五人。 最初は不安だらけだった六人での新しい生活も、 慣れてみれば不安も憂いもないごく普通の 暮らしだった。 むしろ、六人で過ごした日々たちは、 僕の人生のすべてと言っても過言ではない程に 満たされ、充実した―― まさに『幸せ』な毎日だったのではないかと 思う時があるんだ……。
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