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そして彼は胸の奥で封印していたものを吐き出すように言った。
「俺じゃないだろ」
「何が?」
とぼけて見せたのは、蓮都が何を言いたいのか全て分かってるから。
きっと蓮都が言いたいのは、あの静岡の夜のことだ。
そしてその思惑通りのことを蓮都は口にした。
「小雪が本当に欲しいのは、俺じゃなくて兄貴だろ」
あの夜…私がどうして蓮都に抱かれながら龍都さんの名を呼んだのか。
それは自責の念に押しつぶされそうになったからだ。
心はずっと紺野君を探しているのに、他の誰かに逃げようとした自分。
けれど、どうしても消せない”好き”にますます自分が壊れて行くだけだった。
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