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けれど正面で怪しく笑う黒田さんの瞳が私の中にあの日の彼を彷彿させた。
『あの約束はなかったことにしよう』
そう言い放ったあの時の紺野君と……どこか似ている気がして。
「黒田さんすみません。急ぎますので」
「ああ、俺も取引先の専務が福岡から出張に来るんでそのお迎えなんだ。
じゃあ瀬那川君、彼女とごゆっくり」
隣で交わされた蓮都と黒田さんの会話で意識が現実に引き戻される。
しかし軽く会釈した黒田さんが去って行く背中を蓮都は冷たく見つめたままその場から動こうとしなかった。
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