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ゆっくりと開かれたドア。
そして振り返った龍都さんが私の手を取り、中へと導く。
私の背中で小さく音を立て扉が閉まった瞬間、今にも泣き出しそうになった。
そんな私を見下ろしていた龍都さんが両手で私の頬を包み込む。
真っ直ぐに向き合わされた瞳。
頬に触れた手があまりに温かくて、夕陽に包まれた廊下の風景を思い出した。
涙でぼやけてしまった龍都さんの顔が、やっぱり紺野君に見えて胸が苦しくなる。
「ねぇ、小雪ちゃん」
「…………」
「なんでこんなことするの?」
問いかけられた言葉に私は何も答えられないまま、瞼を伏せた。
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