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Act.13 #2
「離してください!」
「申し訳ないけど離せない」
「どうして?!」
必死に歯向かうと歩さんは中性的な瞳を私に向ける。
そして残酷な現実を口にした。
「龍都にとっての冴子は全てであり、冴子にとっての龍都も全てなんだ。だから龍都が他の女を抱いたと打ち明けても冴子はそれを許した。龍都を失うくらいなら、死んだ方がマシだと言ってね。
君はそこまで龍都を愛せるか?」
「…………」
「自分を裏切った男を許し、全てを受け入れることが出来るのか?」
「……私は……」
だってこのお腹の中には……。
けれどその言葉を口にすることは出来なかった。
何故なら…歩さんがあまりにも悲しい瞳を私に向けたから。
まるで哀れな女とでも思われた気がして唇を噛む。
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