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切符を買って改札を抜け、ホームから見上げた空は眩しいくらいの太陽が私に照りつける。
札幌を出た時は、あんなにも心が弾んでいたのに…もう龍都さんが私に微笑んでくれることはきっとない。
それでも、確実にこのお腹の中には愛した人の分身がいる。
札幌に戻れば風間の駒として生きなければならない現実だけが待っている…。
ホームに電車が入って来て、ドアを開くと大勢の人たちがせわしそうに乗り込んで行く。
人々の流れをぼんやりと眺めながら、私はホームから後ずさった。
逃げよう。
このお腹の子と共に、どこまでも。
もうあんな監獄みたいな家に帰りたくない。
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