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その現実に引き戻され、押し黙ってしまった私に紺野君がポツリと呟く。
「兄貴に……会ったんだ」
「えっ?」
「兄貴も東京で働いてんだよ」
「……あ……」
「だけどさ、兄貴は兄貴で幸せな人生を送ってるみたいだから。
たとえ兄弟でも、結局は別々の人生なんだなって思った」
「…………」
チカを箸でつまんだ紺野君は、それを口に放り込むと小さく笑った。
その微笑みが無性に悲しそうに見えて、私の胸が激しく痛みを覚える。
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