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「俺さ、日本を離れることにしたから」
「えっ?」
「だからもう二度とオマエの前に現れることはない」
「……なんで……?」
思わず震えてしまった声で問いかけると、彼は穏やかな微笑みを浮かべて私を見つめる。
「もう俺も歩み出したいんだ。あの苦しみから解放されたい。
だからこの車を使い終わったら、ポストに鍵を入れておくから」
「…………」
何も言えなかった。
彼が言った、あの苦しみという言葉の意味は痛いくらいわかっている。
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