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Act.24 Side Ryohei #2
お互いの中にずっとあった戸惑いは、姫紫に誓った”初めて”の約束だった。
その約束をお互いが守れなかったから、後ろめたい思いだけが色濃くなり先へ進めなくなった。
心をそこに置き去りにしたまま、どれだけ身体だけを重ね合っても解り合うことなんて出来なくて。
虚しさだけを積み重ねた10年間。
けれど二人の生きた10年を無駄にしないためにも。
俺も小雪も追いつけなかった心をあの丘に取り戻しに行くのではなく、この先の人生の中でもう一度見つけるべきなんだと思う。
そう、きっと俺は……もう一度小雪を見つけてみせる。
閉じていた瞼を開いた俺は、凪の海のように穏やかな気持ちで口を開いた。
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