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「今の俺じゃ、彼女の腹にいる子供に偉そうに父親だなんて名乗れない。
生まれて来る子供に、正々堂々と父親である事を名乗れるのは、小雪が俺を心から信じてくれた時なんだと思います。
彼女が俺のそばから離れた意味は、そういうことなんじゃないかって。そんな気がするんです」
「おかしいだろ。愛し合ってるのにどうして離れなきゃならねーんだよ。
たとえお前が人として未完成であっても、子供の父親であることに代わりはないんだぞ」
問いかけて来た瀬那川に俺はやんわりと微笑んでその言葉を告げた。
「じゃあどうして彼女は腹の子の父親が俺であることを告げずにここから消えたのか、瀬那川さんには分かりますか?」
「……それは……」
「わが子の幸せを願うからこそ……。
今は俺も小雪も成長しなければいけないと彼女は判断して離れたんだと思います。
たとえ何万キロ離れようと……姫紫が必ず俺たちを引き寄せると彼女も信じているから」
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