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それなのに彼女は俺にやんわりと微笑むと掠れた声で呟いた。
「夢……みたい」
「えっ?」
「だって紺野君は……」
言いかけた時、先生たちが小雪に駆け寄り彼女の様子をチェックする。
「有坂さん、分かりますか?」
「……は……い……」
彼女は確かに返事をしているけれど、その声はとても弱々しくて今にも消えてしまいそうで。
しかし彼女の様子を見終わった先生から残酷な事実を告げられる。
「意識は戻りましたが、やはり現状の妊婦さんの体力で自然分娩は厳しいと思われます。
このまま手術室に移動します」
「先生、あの……彼女も子供も大丈夫ですよね?」
返って来る答えが同じと分かっていても聞かずにいれなかった。
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