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「ありがとうございます」
有坂勇太郎に深く頭を下げた俺は、看護師に連れられ小雪が横たわるベッドへと足を進めた。
ただでさえ色白な小雪の顔が、やけに白く見えて……泣きたくなる。
半年ぶりに見た小雪は大きなお腹と、ほんの少しだけ顔つきが丸くなっていた。
昏睡状態でありながらも、その顔つきはもうすっかり母親で。
彼女がこの半年間、どんな思いで生きて来たのか考えるだけで胸が痛くなった。
「もしもまた痙攣が起きたらすぐに呼んで下さい」
先生に言われ俺は「はい」と返事をしてから彼女の手を握りしめる。
そして柔らかな髪を優しく撫でながら彼女の名を呼んだ。
「小雪……」
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