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握ったままだった小雪の手が微かに反応を示す。
「小雪っ?」
けれど彼女は返事をすることなく、瞼も閉じたままだ。
俺の気のせいだったのだろうか。
その様子を見ていた先生が、険しい表情のまま俺に言った。
「あと1時間くらい様子を見て、意識が戻らないようだと母子ともに非常に危険ですので、せめて赤ちゃんだけは帝王切開でということになります」
「……せめて赤ちゃんだけって……母親の方はどうなるんですか?」
「それは何とも言えません。最終的には妊婦さんの体力次第としか……」
「そんな……先生……小雪も赤ちゃんも助けてください」
必死に訴えると、先生は複雑な思いが抑えきれないかのように固い表情で俺の肩を叩く。
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