31人が本棚に入れています
本棚に追加
なんで、…なんでお前はそうなんだよっ。
自ら吐いた言葉への嫌悪感を必死に抑えながら、俺はさらに梛音へと毒を浴びせ続けた。
「この際言わせてもらうが、俺はゲイなんかじゃない。俺のケツを狙うお前が哀れで、からかってただけだ。もういい加減それにも飽きたから、俺に付きまとうのは辞めてくれ。うんざりなんだよっ」
酷い事を言ってる。今夜の俺は今までの人生の中でも、最低の部類に入るな。情けなくて反吐が出る。
俺に好意を寄せてくれた梛音を最も傷付ける言葉だった。
頼む、梛音。俺を殴ってこの場から出て行ってくれ、俺は心の中でそう懇願した。
けれど梛音は怒るどころか、動揺すらもしてくれない。
そして、意外な言葉を口にした。
「うん、ゲイじゃないのは解ってたよ。ただ女性を愛せなくなってしまっただけなんだって」
「っ、どうしてっ。」
余りの驚きに、二の句が継げなくなってしまう俺。
「どうして分かったのかって顔だね。……そうだね…それは以前の僕がそうだったからかな。」
自分を恥じるかの様に梛音は笑った。確かに顔は笑っているのに、心が痛そうに見えるのは何故だろうか。
そうか、嫌にすんなりゲイだと公言していると思ったら、俺と同じで振りだった訳か。ん、待てよ。確か過去形だったような…。
最初のコメントを投稿しよう!