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何度目かの失神と覚醒を繰り返した俺は、ふと我に返り自分を背後から抱きしめている存在に気が付いた。
「大丈夫だから、大丈夫だから」
何度も呪文のように唱えながら、その声の主は包み込むように優しく俺の身体をさすり続ける。
「な、お、と?」
白い靄(もや)が掛かったかのようにハッキリしない意識を集中させ、俺は聞き覚えのある声に何とか反応した。
「かえっ、たんじゃっ?」
梛音は俺の身体を先程よりも強く抱き締めながら、そっと俺の背に頬を寄せる。
「違うよ。憐はきっと知られたくないだろうから、帰るフリをしてずっと見てたんだ…」
こんな無様な姿を見せてしまった俺よりも、心配してそばに居てくれた梛音の方が、何故だか申し訳なさそうだった。
首筋に掛かる梛音の温かい吐息が、俺には酷く心地よく、それでいて、どこか落ち着かなかった。
「最後まで気付かれないようにするつもりだった。けど憐の苦しむ姿を見てたら、我慢なんか出来無かったよ」
こいつは一体何なんだ、よ……。
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