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少年(憐)は自分の腕を握っている男(梛音)を、訝しげに睨みつけた。
「……何なんですか?」
まるで不審者でも見るかのような、憐少年の冷たい視線に怯み、梛音は慌ててその手を放し、突然の非礼を詫びた。
「すまない、知り合いと間違えたようだ」
目前の失礼な男を、不信感丸出しで上から下まで凝視すると、少年は「二度はないぞ」とばかりに再度にらみつけた。
そして無言でさっさとその場をあとにしてしまった。
視界から去ってゆく背中を、瞳に焼き付けるように、名残惜しむように、梛音はいつまでも追っていた。
微笑んでいるのに、なぜかその瞳には哀しみの色が見て取れた。
「……やっと、見つけた。遅くなってごめんね、憐」ーーーー
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