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これまで俺の芝居を見破るやつなんて、一人も居やしなかった。
俺がそれだけの付き合いしかして来なかった、というのもあるが…。
そうであっても、梛音の鋭さには改めて危機感を覚えさせられる。
「だから、お前には油断がならない」
やはりもう潮時だった。
このまま今の関係を続けて行けば、いずれ必ず梛音は、俺の秘密に行き着いてしまうだろう。
うっかり心を許して、ゴミのように捨てられるなんて、もう懲り懲りだ。
軟弱な自分が温もりを求めてしまわぬ様に、俺は心に蓋をする。
駄目だ、ヤ・メ・ロッ。
俺は誰も信じない、だから誰も俺を裏切れない。
さあ、舞台の幕を上げようじゃないか。
ただし、今夜のシナリオのセリフは『ぼく』じゃなく『俺』に変更だ。
決して本心を見抜かれないように、だけど梛音の心の痛みからは目を背けないように、俺は梛音の瞳の奥を見つめた。
いや、それは言い訳だった。俺はただ単に、梛音の顔を見つめて居たかっただけだ。
「もう、お前は用済みだ。俺はお前を利用してた、…周りと上手くやりたかったからな。お陰で楽に大学生活を送れそうだから、お前はもう要らない」
なるべく感情を乗せず、あくまでも冷たく俺は言い放った。
けれども梛音は驚くことも、不快感を表すことすらもなかった。むしろ何気に嬉しそうだ。
「そっか。憐の役に立てたなら良かったよ」
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