第1章

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 「忙しい。」  その一言で、美羽の週末は暇になる。  「分かった。」  言葉とは裏腹に、美羽の心中は納得できずにざわめいた。  「またね。」  美羽の言葉に、うなりに似た声で答えた高志は携帯電話の通話をブツリと切った。  電話をかけた数分前と何一つ変わりないのに、美羽は、一人暮らしの部屋に取り残された気分になった。  高志は今、就職活動で忙しい。  それは分かっているけれど、一足早く就職を決めた美羽は、余裕がある分、孤独だった。  卒業すれば今まで通りにはいかなくなる。  卒業までの時間には限りがあり、その先の時間は永遠に思えるほど長い。  今までとは違う。  今までとは変わる。  ふわふわとして所在なく、見えない未来は美羽の心に怯えを生じさせた。  変化は怯えと同時に期待もくれる。  美羽の心は怯えながら期待していた。  二人の未来に。
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