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「忙しい。」
その一言で、美羽の週末は暇になる。
「分かった。」
言葉とは裏腹に、美羽の心中は納得できずにざわめいた。
「またね。」
美羽の言葉に、うなりに似た声で答えた高志は携帯電話の通話をブツリと切った。
電話をかけた数分前と何一つ変わりないのに、美羽は、一人暮らしの部屋に取り残された気分になった。
高志は今、就職活動で忙しい。
それは分かっているけれど、一足早く就職を決めた美羽は、余裕がある分、孤独だった。
卒業すれば今まで通りにはいかなくなる。
卒業までの時間には限りがあり、その先の時間は永遠に思えるほど長い。
今までとは違う。
今までとは変わる。
ふわふわとして所在なく、見えない未来は美羽の心に怯えを生じさせた。
変化は怯えと同時に期待もくれる。
美羽の心は怯えながら期待していた。
二人の未来に。
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