時計仕掛けの体温計

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満員電車の中私はつり革に捕まりながら 読書をしていた ゴホンゴホン!ゴホン! ちょうど私の目の前に座っていた男性が急に激しく咳をしだした その男性は無造作に伸びたボサボサの髪の毛をかきむしり指の匂いを嗅いだ 「うぅ…汚い…」 こんな時私は今すぐにでもこの電車から降りたくなる なぜこんな不潔な人と潔癖症の私が同じ乗り物に乗らなきゃいけないのだ ハンカチをかませて掴むつり革を ギュっと力強く握り我慢する 家へ着くと軽く目眩がした オデコも少し熱い 私は薬箱を開けて体温計を探した 「あった!」 すぐさま体温計を脇に挟みソファーにもたれ掛かった ピ! 37.6度 微熱だ…電車のあの男め 私に風邪を移したな
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