時計仕掛けの時計

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男は時計の時間を先程からずっと気にしている その男の職業は漫画家だ 膝をガクガクと貧乏揺すりしては 無造作に伸びきった髪の毛をかきむしり指の匂いを嗅ぐ そしてペンをはしらせてはまた時計を気にするのだ 男には締め切りが迫っていた もうすぐ漫画の原稿を受け取りに 奴がやってくるのだ 膝を揺する動作が先程よりも速くなり いよいよ髪の毛をかきむしって匂いを嗅ぐ時間すら無くなった 男は全神経を机の上の原稿用紙に集中した ピンポーン! 「!!」 男の肩が玄関のチャイムの音で跳ね上がる 原稿を取りにやってきたのだ 男は時計を見た 約束の時間ピッタリだった 握っていたペンを机の上にそっと置き 玄関へと向かう
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