5人が本棚に入れています
本棚に追加
男は時計の時間を先程からずっと気にしている
その男の職業は漫画家だ
膝をガクガクと貧乏揺すりしては
無造作に伸びきった髪の毛をかきむしり指の匂いを嗅ぐ
そしてペンをはしらせてはまた時計を気にするのだ
男には締め切りが迫っていた
もうすぐ漫画の原稿を受け取りに
奴がやってくるのだ
膝を揺する動作が先程よりも速くなり
いよいよ髪の毛をかきむしって匂いを嗅ぐ時間すら無くなった
男は全神経を机の上の原稿用紙に集中した
ピンポーン!
「!!」
男の肩が玄関のチャイムの音で跳ね上がる
原稿を取りにやってきたのだ
男は時計を見た
約束の時間ピッタリだった
握っていたペンを机の上にそっと置き
玄関へと向かう
最初のコメントを投稿しよう!