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 見る見るうちに火照ったように顔が熱くなるのが分かる。世間体なんて馬鹿らしい、と思っていたけれど。  悲しいかな、血は争えないらしい。ココが自分の部屋ならバタバタと悶えて部屋の埃を舞い上げるところ――と。そんな事を考えていると。  不意にコンコン、と。浴場の扉をノックする音が、聞こえてきた。  「――申し訳ありません。今、宜しかったでしょうか?」  「あッ、は、はい! 是非もないです!」  まさか大絶賛自戒中だとは言えまいよ。人ん家の風呂まで借りてさ。  曇りガラスの戸の向こう。私の家のリビングくらいある脱衣所で、声をかけてきたのは、この家の使用人・瞳視(ひとみ)さん。  湯気と元来の戸の作りのせいで、二重にぼやけても、そのシルエットは容易に分かる。不思議な調和を醸すボブカットの金髪とそれは見事なヴィクトリアン・スタイルのメイド服が、困惑に揺れている。  その所作は、しかし素人目に分かるほどに上品で。本当に同い年――あるいはその近辺にいる人なのだろうか、と疑問符が浮かんでしまう。少なくとも私の友達に、ここまで大人びた雰囲気の人はそういない。  ――と言うか、そんなかしこまらないで欲しい。私なんて、たかが一介の女子高生じゃないか。むしろ息苦しく思えてしまう。  そんな私の、わたわたとした内面を反映したのかざばざばと、音を立てて水面が揺れる。さざなみと波紋が引っ切り無しに湯をタイル地の床に落とし、跳ねさせる。  「――そうですか。では、数点ほど」  まぁ本人がいいと言うのならいいのだろう――みたいな。そんな事を思ったんだろうな、と言うのが私にも伝わってくるような沈黙の後。    瞳視さんは、極めて事務的な口調で、用件を私に伝え始めた。
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