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「おのれッ」
辻斬りは剣を急襲者に投げつけた。
黒い袂がひらりとそれを避ける。
着流しに雪駄、
そして黒い羽織。
帯からは紫房をつけた十手が覗く。
同心だ。
地べたにへたりこんでいた二人の顔が喜色に輝いた。
「しゃっ!」
辻斬りは脇差しを手に同心へ飛び掛かっていった。
だが同心は今度は避けなかった。
両腕を広げ、
そのまま辻斬りを正面から受け止めたのだ。
「ああっ!」
悲鳴を上げたのは手代だ。
辻斬りの刀が同心を貫いて背中の方まで突き出したように見えたからだ。
だが同心は平気な風で、
刀を右手に持ったまま両手で辻斬りの胴を抱えると、
そのままぐおっと頭上まで持ち上げてしまった。
恐ろしい力だ。
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