「殺すチャンスがあれば、殺すかもしれませんね」
理恵は本心で伝えた。この男に何を言っても無駄だと悟ったからだ。
「そうか、だがあまりお勧めはしないよ」
何の感情もこもってないような言い方だった。それだけに、理恵に対しては何も響いてこない。
「ご心配には及びません、どうせそんな勇気はありませんから」
これもまた本心であった。
内心では殺してやりたいほど憎い。罪を逃れたのが腹立たしいくらいに憎い。
だが己の正義感がが邪魔をするのか、そんな事を犯せる気がしなかった。
「それはそうとして、君はこの事件をどう見ているんだね」
ここで漸く吉岡は顔をこちらに向けた。
「君はこの事件をなんの罪に問うつもりだね?」
吉岡の眼光は鋭かった。それに臆することなく、理恵は平然と返す。
「殺人罪としてです」
理恵の芯の通った声だ。
「なるほどな」
背もたれに体重を預けた吉岡は、どこか全てを悟ったような顔をしていた。
「なんでしょうか」
それを面白く思わなかった理恵。ジト目で吉岡を見つめると。吉岡は咳払いをした。
「いや、実にしぶとい、執念深い女だと思っただけだよ」
核心を語らない吉岡に、理恵は追求を諦めてため息をついた。
「だが、一つ言えることがある」
何に対しての「だが」なのかはイマイチ理解できなかったものの、理恵は吉岡に目を向けた。
「神崎智也が介入した時点で、この事件は、警察は蚊帳の外になるだろうね」
遠くを見る吉岡、それに対して、理恵はさらに追求をしたくなった。
「それは一体どういう意味ですか?」
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