第1章

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「殺すチャンスがあれば、殺すかもしれませんね」  理恵は本心で伝えた。この男に何を言っても無駄だと悟ったからだ。 「そうか、だがあまりお勧めはしないよ」  何の感情もこもってないような言い方だった。それだけに、理恵に対しては何も響いてこない。 「ご心配には及びません、どうせそんな勇気はありませんから」  これもまた本心であった。  内心では殺してやりたいほど憎い。罪を逃れたのが腹立たしいくらいに憎い。  だが己の正義感がが邪魔をするのか、そんな事を犯せる気がしなかった。 「それはそうとして、君はこの事件をどう見ているんだね」  ここで漸く吉岡は顔をこちらに向けた。 「君はこの事件をなんの罪に問うつもりだね?」  吉岡の眼光は鋭かった。それに臆することなく、理恵は平然と返す。 「殺人罪としてです」  理恵の芯の通った声だ。 「なるほどな」  背もたれに体重を預けた吉岡は、どこか全てを悟ったような顔をしていた。 「なんでしょうか」  それを面白く思わなかった理恵。ジト目で吉岡を見つめると。吉岡は咳払いをした。 「いや、実にしぶとい、執念深い女だと思っただけだよ」  核心を語らない吉岡に、理恵は追求を諦めてため息をついた。 「だが、一つ言えることがある」  何に対しての「だが」なのかはイマイチ理解できなかったものの、理恵は吉岡に目を向けた。 「神崎智也が介入した時点で、この事件は、警察は蚊帳の外になるだろうね」  遠くを見る吉岡、それに対して、理恵はさらに追求をしたくなった。 「それは一体どういう意味ですか?」

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