第1章

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あやちゃんに見送られながらエレベーターホールへ向かった。 会議室は今いるフロアーから10階上の20階だ。 エレベーターを待っていると、後ろから 「お疲れ様」 と声をかけられた。  「お疲れ様です。」 と振り返ると、本社の企画部部長が立っていた。  すぐに顔を戻し、エレベーターの点滅に集中する。私はどうもこの向井部長が苦手だ。私が支社に転勤となった時に入れ違いで本社に戻ってきた。 有名大学をでて、30半ばで本社の企画部部長に大抜擢されたエリートだ。  チラッと横目で、隣りに立つ部長をみた。オーダーなのか、仕立てのいいスーツに綺麗に磨かれた靴。薄いフレームの眼鏡からは切れ長の目、きっちり整えられた髪。非の打ち所がないってこの人のこというのかしら? なんて思っていたら、バチっと目があってしまった。  慌てて目をそらし、タイミングよく開いたエレベーターに乗った。  あー、恥ずかしい…。合った目はものすごく冷たくて、なんでみちゃったんだろう?と後悔しながら会議室に向かった。  会議は予定通り終わって、急いで待ち合わせのカフェに向かった。  「あやちゃんお待たせ~」  「あっ、先輩お疲れさまです~!」  私に気づいたあやちゃんが満面の笑顔迎えてくれたので、私もつられて微笑む。  「先輩…その笑顔反則…」  「えっ?なんて?」  「いえ、何でもないです。   先輩、それよりどこ行きます~?」  「そうだねー、本社久しぶりだし、近くでいい?」  あやちゃんの了解を得て、本社から歩いて5分のイタリアンに入った。  「先輩素敵なお店ですね~!」  「うん。私もこないだ淳也に連れてきてもらってすごく美味しかったから、本社にきたら寄りたいなぁと思っていたら嬉しい!」  「あっ、そうなんですね~、山崎さんといらっしゃったんですね~」  山崎淳也、入社して本社で配属になった部署の2歳上の先輩で、私の教育担当だった。一緒に仕事していくうちに面倒見がよく、優しい淳也に惹かれて… 付き合いは3年になる。お互い仕事が忙しく、なかなか平日は会えないが、週末に時間が合えばお互いの家にお泊まりしたり喧嘩もなく上手くいってると思う。
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