第1章

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 そんなことを思っていたら、向かいのバカ男と目があった。  何かの間違いかと思ったのか、目を伏せた後、目を見開いてもう一度こちらを見た。  この時、淳也がいつもの爽やかな笑顔で手でも振ってくれたら、後輩と飯だよって笑ってくれたらいつもと変わらない日々が待ってたのかもしれない。  優希が転勤して寂しいって言ってくれたあの甘い言葉も信じたままだったかもしれない。  けど、最初にみた時から気づいてた。  あきらかに二人は大人の関係で、もう戻れないんだろうってことは。  だから、勘がいいあやちゃんはあんなに動揺してたんだと思う。  こちらに気づいた淳也は、あきらかに挙動不審で、あまりのあわてぶりに笑いがこみ上げてきた。  私が笑ったのが怖かったのか、飲み物を零して、彼女にかかってしまったようだ。立ち上がった彼女のスカートを慌てておしぼりで拭いている。  その姿をみて、一気に淳也への気持ちが萎えてしまった。  「あやちゃん…ごめん…帰ろっか」  「はい…」  小さく頷いたあやちゃんをみて、お会計をお願いした。  ビール飲み損ねた!なんて冷静に考えてる自分に呆れながら、払いますと聞かないあやちゃんを宥めながら店をでた。
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