第1章

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店を出た途端  「ぜっ…ぜっ…じぇんぱ~い!!」  と、あやちゃんが泣き出してしまった。ヒックヒックといいながら、涙は止まりそうにない。  大丈夫、大丈夫だからってなだめても、逆効果で  「先輩が泣かないから、私が泣いてるんです~!!!」  っていうあやちゃんの頭をヨシヨシしてたら、急にあやちゃんが泣き止んだ。  しかも、私の肩ごしに目で人を殺せるんじゃないかという目つきで睨んでる。  案の定、振り返ると焦って泣き出しそうな淳也が立っていた。  なんであんたが泣きそうなのよ!と突っ込みたくなるのを抑えて、淳也に向き合った。  「優希!!」  「何?」  自分でもびっくりするくらい低い声が出た。  「違うんだ!」  「何が違うの?もういいよ、よくわかったから」  「違う!話しを聞いてくれ!!」  「もう話すこともないし、彼女待たせてるんだから、店戻ったら?」  「なんでお前はいつもそうやって冷静なんだよ!!!」  なんであんたが逆ギレしてんよ!!とキレそうになりながらも怒りを抑えて答えた。  「みてわかんない?ここ店の前だよね?しかもお互い後輩連れてるんだよ?私達の言い争いみてどれだけ気を使わせるのかわかんないわけ?   淳也が戻らなかったら、彼女だっ…」  って、遅かったか…  ハッ、として今の状況を理解した淳也が店を振り返えると、西山さんが立っていた。    後輩に彼氏を取られるという、屈辱的な状況だが、会社近くだし、お店の前だし、なんて冷静に考えることで、無理やり自分の感情を押し込めた。
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