第1章

8/57
前へ
/61ページ
次へ
 スタスタと歩きながら、私の手を引いてくれるあやちゃんの肩が震えてて、それに声をかける余裕もなく、ボーッと空をみながら歩く。      「先輩!先輩!」  心配そうに私の顔を覗き込んだあやちゃんに気づいて、タクシーに乗せられてるんだとわかった。  「ごめんね、あやちゃん」  「先輩が謝ることなんて、何ひとつないです。謝るのは私の方です。私がアイツにあんな言い方したから、先輩…」  たぶん、自分のせいで、私が最後まで淳也に冷静に別れを告げたことへの後悔だろう…。  「あやちゃんのおかげで、感情むき出しにの惨めな女にならなくてすんだよ。西山さんも後輩だから、ひどいこと言わずにすんだし…ねっ?」  これはほんとだ。あやちゃんがいなかったら、淳也と西山さんの2ショットに耐えれたかわからない。あやちゃんが言わなかったら、私が言ってたかもしれない。  いまだに涙が止まらないあやちゃんが  「先輩!!もう泣いていいですよ!今夜はずっと私が先輩の頭、ヨシヨシしますから!!!我慢しないでっ……お願い…っ、だから…」  あやちゃんの涙の懇願に、胸が熱くなった。と同時にウッ…と涙が込み上げてきた。一度でてしまえば、とどまることを知らない涙は次から次へと溢れ、タクシーだからと声を殺して家まで泣き続けた。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加