第1章

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 タクシーに告げた先は我が家だったようで、着いてからは、私からキーケースを取り、玄関で靴を脱がせ、お風呂を溜めてお気に入りのアロマを入れてくれ、スーツまで脱がせてくれて、まるでお母さんかっ!と突っ込みたくなるくらい、甲斐甲斐しく世話をやいてくれた。  ゆっくり浸かってお風呂から上がると、あやちゃんがおつまみを作ってくれていた。テーブルの上にはワインと焼酎セットが並んでいる。  地方から出てきた私は、本社から電車で15分くらいのマンションを借りて住んでいる。あやちゃんはよく泊まりにくるので、お泊まりセットも置いてあるくらいだ。お酒もよく飲むのであやちゃんお気に入りの一升瓶の焼酎や日本酒まである。  「どんだけ飲む気よ~?」  と、笑いながら突っ込むと  「先輩が眠るまでです!」  と、鼻をフガフガならしながら答えた。  本当にいい後輩だ。あやちゃんが男だったら、一生ついていくところだ。    2人でグラスにお酒を注ぎ、ひたすらバカ男の悪口を言って飲み明かした。  「あの女、許さーん!!!!  ギャフンと言わせてやります!!」  と、お人形さんのような可愛い顔からは想像つかない言葉を発しながら、私を今夜独りにしないでいてくれたあやちゃんの気持ちが嬉しくて、また涙がでた。
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