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休憩が終わり、梓は再び粛然とした顔を保ちながら椅子に座り、契一は鉛筆を手にすると描きかけのキャンバスに筆を執った。
「なぁー…お前は大学に行っても絵を描くのか?」
椅子の背凭れを前にして股がり座った歩は熱心に鉛筆を進める契一へと訊ねた。
「あぁ…」
「プロになれるか解らないが大学に行ってもっと絵の勉強をして」
「絵を描きたい」
帆布を見つめる契一の真剣な眼精は光輝いて見えた。
「しっかりしてんだな…」
将来を不安視する暗い翳りが感じ取れるも立派に前を向いている契一の背中はいつもより少し大きく見えた。
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