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1、
「ねえねえ、聞いた?」
「聞いた聞いた、転入生来るんでしょ?」
「そうそう、まだ女子か男子かも教えてくれないんだよ、どんな子がくると思う?」
「そうだなー、私は女子に賭けて友達増やしたいなあ」
楽しそうに話を展開させているのはクラスの女子。
男子はというと転入生に興味がないようで、昨晩のバラエティ番組の話で盛り上がったり、ゲームの話で盛り上がったりと集まりも適当に過ごしていた。
朝礼前の自由な時間。
「よう、岡崎。朝からしけた面してんなあ、低血圧か?」
「まあそれは前からだけど、今日は転入生が来るって女子の噂で聞いたから気になっててさ」
岡崎弥生。入学当初から「やよ」とか「およい」と奇妙な名前で呼ばれ、それなりに美形だと周りから言われるその顔立ちは確かに「それなりに」美形だ。
彼のことを岡崎と呼ぶのは初対面の相手か、今話しかけてきた彼だけだろう。
「岡崎さ、女の子希望?俺は断然女の子希望。このクラス胸まな板な奴しかいねえじゃん、正直見てるこっちが寂しくなるよな。だからでかいの持ってる女子ひとりぐらいは欲しいわ。」
女子から変態と呼ばれ、自覚しているはずなのに毎度この調子の彼は遠藤龍。
中学で意気投合し、高校の志望校をすべて同じにした二人は、弥生が志望校一校以外すべてに合格、龍は志望校一校のみ合格という結果になった。どうしても同じ高校に進学したかった弥生は龍のレベルに合わせた学校に入学となったので、学年では常に学力トップという成績を残している。
「僕は極力そういうところは見ていないからなんでもいいよ」
「学級委員さんはそういうところに目がいかないよう気を付けなきゃいけないから大変ですねえ」
「龍だって学級委員じゃん」
「そうでしたそうでした」
二人は学年が認定するほどの仲良しで、クラスが同じになると必ず二人揃って学級委員になる。成績トップとおちゃらけトップということで親しまれているということは本人たちもよく耳にする話だった。
「でも学級委員が転入生のこと何も知らないって変じゃねえか?普通初めに挨拶しに行ったり握手しに行ったりするだろ?」
「握手…しないよね」
「総理大臣とかするじゃん握手」
全然関係なくなったよと呟く弥生をよそに、龍は朝礼までずっと転入生についての想像を膨らませていた。
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