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朝礼の始まりを知らせるチャイムが鳴る。
遅刻する生徒も今日ばかりは転入生を見るためにと着席していた。
「それでは皆さんに新しい仲間を紹介します。この時期ということもあってなかなか馴染めず夏休みを迎えてしまうとは思いますが、皆で仲良くしていきましょう」
新しい仲間とか、仲良くしようとか、小学校じゃあるまいしと思いながらもどこかで転入生を楽しみにしている。それが今のクラスの様子だろう。
この時期、というのは中間試験が終わった翌日のことで、まだ新学期が始まって一か月と少し経ったばかりの時だったので何か事情があるのだろう、弥生はそう考えていた。
紹介される前から担任の横に立っているのは小柄で華奢な女子生徒だった。
「名前とどこから来たか、簡単に自己紹介をお願いします、伊那さん」
担任がそう言うと、すかさず龍がつっこみをいれる。
「伊那さんって言っちゃだめっしょ、かわむー」
「あ、そうだったね、ごめんごめん」
かわむーという愛称で親しまれている担任は河村という男性教諭で、この学校期待の新人だ。専科は社会なのだが、好きな科目を問われると数学と答える天然タイプが生徒にウケている。
河村が女子生徒に言った。
「では簡単に自己紹介をお願いします。」
女子生徒は河村を一度見上げると小さく頷き、数分間に渡ってクラスメイト全員を見渡し言った。
「伊那霊亜です。長野から来ました。東京と聞いていたのですが自然がたくさんあって人も少ないので安心しました。よろしくお願いします」
声そのものは美しいのに、話したことがないのかと思うくらい小声だった。
「緊張してんなあ」
このときばかりは龍が言うことに弥生も同感だった。
「伊那、霊亜さん、か」
一つ一つの言葉を確認するように呟く。
「…どこかで聞いたことがあるような…」
弥生の呟きは龍にも聞こえていたようだ。
「まじで?あんな美人と会ったことあんの?」
小柄で華奢で胸もないので興味は無いと思っていたが早速目をつけている龍を弥生は哀れむ目で見ていた。
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