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「そんな可哀想な目で俺を見るな」 「いや、こればかりは本当に龍の頭が可哀想だ」 「俺の頭なんだから俺がいいと思ったらいいんだよそれで…」 どうしてこいつはこんなに頭が悪いのだろう。僕のせいだろうかと自分まで責め始める弥生に、朝礼中の河村がふと何かを思い出したかのように動きを止めて言った。 「あ、岡崎くん、隣の席を伊那さんに使ってもらうからいろいろ教えてあげてね」 最初は何を言われたのかわからなかったが、ようやく理解できた弥生は「はい」と返事をする。 「伊那さん、今の友達の隣に席を用意しているからそこに座ってね」と河村が言う。するとまた龍がつっこみを入れる。 「かわむー、お友達とかやめようよ、小学生扱いされてるみたいで嫌だー」 クラスが笑う。 「あれ、ごめん、今度から気を付けるね、じゃあ伊那さん、座って座って」 苦いものを口に入れたような表情をして河村が謝った。 五分休憩を知らせるチャイムが鳴る。 同時に、弥生は思う。 今日も平凡な一日になりそうだな、と。 はっきり言って、女子の転入生は二日三日だけ男子の見ものになるが、それ以上は続かない。今までがそうだった。 男子の転入生は男子のどのジャンルに入ればよいのかをなんとなく察し、その輪で楽しむ。逆を言えば、女子のようにリーダーが見物に言って「グループ」に入れるか入れないか、お気に召すか召さないかをいちいち決めるようなことはしない。男子にはそれなりに威厳のようなものがあるのだろう。 しかし隣に座る霊亜と呼ばれる彼女には、美しさの裏にある「もの」を感じた。 それはただならぬもので。 だがまだ誰も、 朝礼の終わりを知らせるチャイムは、平凡な日常に終わりを告げるものになると思ってもいなかった。
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