5人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
手袋を付けながら、俺は自分の運転する電車へと向かう。あ、そうそう。大事な鞄も忘れずに。
電車に着くと既に運転手はおらず、お客が既に乗っていた。今は昼間というのもあり、朝夕のラッシュ何かに比べたら人は少ないが。
運転席に入ると、俺は計器などのチェックを行う。うん、異常はどこにもない。今日もいつも通りだ。
さらに椅子に座ると、時刻表をチェック。いつも通りの単調な作業だが、1つでも怠ると大事故に繋がる。忘れず確認、と。
まだ発車まで時間があるので、椅子に座り前の景色を眺めてみる。
田舎の風景が広がって、線路がずっと先まで広がっている。駅ではアナウンスが流れ、お客の声が時々聞こえてくる。反対の線路から電車が戻ってきた。
『お知らせします。この電車は△時×分発、○○行きの電車です。発車までしばらくお待ちください……』
最後尾に乗る乗務員のアナウンスだ。この方は俺や先輩よりも年上で、いつも流暢な声で喋る。羨ましい限りだ。俺もあんな風にやってみたい。
「さてと、そろそろかな……」
俺は時計を見ていつもと同じ言葉を呟く。いつもと同じ日常、今日も何事もなく平常通りだろう。事故なども起きることはない。
しかしそんなはずなのに、いつもと変わらないはずなのに俺の心には一抹の不安がよぎった。今日は何かと違う感じがする。何故だろう。
(嫌な予感がする。何だこれは?……うーん、恐らく先輩が変な話をするからだろう。そうに違いないさ)
俺はそう心に思うと不安を打ち消し、近くの時計を確認した。うん、時間だ。
『○○行き、発車いたします』
アナウンスが響く。それを聞くと俺は、
「異常無し、出発進行」
計器を再び確認すると、そう言って電車のレバーを前に倒し、出発した。
最初のコメントを投稿しよう!